「売上が下がっているから、とりあえず営業訪問を増やそう」
「部下のモチベーションが低いから、面談回数を増やそう」
「クレームが多いから、マニュアルを作り直そう」
こんな対策を打っているのに、なぜか問題が解決しない。むしろ新たな問題が次々と発生して、毎日が火消しの連続になっていませんか?
実は、問題解決がうまくいかない原因は、あなたの能力不足ではありません。私が15年間、30店舗を管理し、50名以上のスタッフを育成してきた経験から断言できます。ビジネスにおける問題解決の失敗は、ほぼ100%「やり方」の問題なのです。
この記事では、多くのビジネスパーソンが陥る問題解決の落とし穴と、その脱却方法を具体的にお伝えします。読み終わる頃には、なぜあなたの対策が空回りしていたのか、そして明日から何をすべきかが明確になるはずです。
なぜ問題解決がうまくいかないのか?多くの人が知らない真実
「問題解決なんて、経営コンサルタントや企画部門の仕事でしょ?」
もしそう思っているなら、大きな誤解です。
トヨタ自動車では、過去40年以上にわたり、部門を問わず全社員にTBP(トヨタビジネスプラクティス)という問題解決手法を実践させています。エンジン設計であろうが、海外営業であろうが、調達であろうが、全員が共通の問題解決フレームワークを使っているのです。
📊 問題解決の実態
- 100社以上の企業研修で判明:問題解決の手順を学んだことがある人は5%未満
- 多くの人が「勘と経験」「他人のアドバイス」で場当たり的に対処
- 結果:同じ失敗を繰り返し、問題が慢性化する
私自身、30店舗を管理する中で気づいたことがあります。それは、問題解決がうまくいかない店舗には共通のパターンがあるということです。
ビジネスパーソンが陥る「HOW思考」という最大の落とし穴
HOW思考とは何か?
問題に直面したとき、ほとんどの人が真っ先に考えるのは「どうすれば?」という対策です。これを私たちは「HOW思考」と呼んでいます。
実際にあった事例をご紹介しましょう。
💼 神田製作所マルチメディア事業部の失敗例
売上が3年で286億円→220億円に激減(23%ダウン)
打った対策:
- 営業担当の顧客訪問回数を月間目標化
- 社内イントラネットで情報共有を強化
- 競合他社のシェア表を整備
結果:営業利益は31億円の黒字→11億円の赤字に転落
なぜこれほど多くの対策を打っているのに、効果が出なかったのでしょうか?
なぜHOW思考では問題が解決しないのか
HOW思考の最大の問題は、根本原因を見逃すことです。
例えば、「売上が下がった→営業訪問を増やそう」という思考。一見理にかなっているようですが、そもそも売上が下がった原因が「商品力の低下」だったらどうでしょう?いくら訪問回数を増やしても、売れない商品は売れません。
私が管理していた店舗でも同じことがありました。スタッフの離職率が40%を超えていた時期、最初は「給与を上げる」「福利厚生を充実させる」といった対策ばかり考えていました。しかし、根本原因は「店長のマネジメント方法」にあったのです。
問題解決に失敗する3つの落とし穴【あなたはいくつ当てはまる?】
落とし穴1:勘と経験による思い込み
「自分の仕事のことは自分が一番わかっている」
この過信が、問題解決の大きな障害になります。15年前、私も同じように考えていました。携帯販売で月間売上1位を3回獲得した経験から、「売れる方法」を完全に理解していると思い込んでいたのです。
しかし、スマートフォンが登場し、格安SIMが台頭してきた時、過去の成功法則は通用しなくなりました。環境が変化しているのに、昔のやり方に固執していては、問題は解決しません。
落とし穴2:無責任・無関心
「問題の原因?それは上司が考えることでしょう」
「私は言われたことをやるだけです」
こんな思考に陥っていませんか?
50名以上のスタッフを育成してきて分かったことは、成長する人とそうでない人の違いは、問題に対する当事者意識の差だということです。「誰かが何とかしてくれる」という他力本願では、いつまでも問題解決能力は身につきません。
落とし穴3:HOW指示の連鎖
管理職の方、要注意です。
「これをやれ」「あれをやれ」と、HOWだけを指示していませんか?なぜそれをやるのか、何のためにやるのかを説明せずに、ただ指示だけを出す。これでは部下の思考力を奪い、組織全体が「指示待ち集団」になってしまいます。
✅ セルフチェック:あなたはいくつ当てはまる?
- □ 問題が起きたら、すぐに「どうするか」を考える
- □ 過去に成功した方法を今も使い続けている
- □ 「原因は何だろう」と深く考えたことがない
- □ 部下に理由を説明せずに指示を出すことがある
- □ 「とりあえずやってみよう」が口癖
3つ以上当てはまる方は、HOW思考に陥っている可能性大です。
正しい問題解決の手順「WHERE→WHY→HOW」とは
では、どうすれば問題を効果的に解決できるのでしょうか?
答えはシンプルです。WHERE→WHY→HOWの順番で考えることです。
まずWHERE(どこに問題があるか)を特定する
友人から「体調が悪い」と相談されたとき、あなたならどう答えますか?
「病院に行けば?」と答える前に、まず「どこが悪いの?」と聞くはずです。頭が痛いのか、お腹が痛いのか、問題の箇所を特定しなければ、適切な対処はできません。
ビジネスも同じです。「売上が下がった」という漠然とした問題ではなく、「首都圏の30代男性の売上が下がった」というように、問題を絞り込むことが重要なのです。
次にWHY(なぜ起きたか)を深掘りする
問題の箇所が特定できたら、次は原因の究明です。
トヨタには「なぜなぜ5回」という有名な手法があります。「なぜ?」を5回繰り返すことで、表面的な原因ではなく、根本原因にたどり着くという考え方です。
🔍 なぜなぜ分析の例
- 売上が下がった → なぜ? → 来店数が減ったから
- 来店数が減った → なぜ? → リピート客が減ったから
- リピート客が減った → なぜ? → 再来店の動機がないから
- 動機がない → なぜ? → 競合との差別化ができていないから
- 差別化できない → なぜ? → 顧客ニーズを把握していないから
最後にHOW(どうするか)を考える
根本原因が分かって初めて、効果的な対策を考えることができます。
上記の例なら、「顧客ニーズの調査」「差別化ポイントの明確化」「リピート施策の構築」といった対策が考えられます。単に「営業訪問を増やす」という表面的な対策とは、全く違うアプローチになることがお分かりいただけるでしょう。
今日から実践できる!HOW思考から脱却する3つのステップ
理論は分かったけど、実際にどうすればいいの?という方のために、今日から始められる具体的なステップをご紹介します。
🎯 HOW思考脱却の3ステップ
ステップ1:問題に直面したら「すぐに対策を考えない」と決める
まず深呼吸。そして「ちょっと待て、すぐに対策を考えない」と自分に言い聞かせる習慣をつけましょう。最初は違和感があるかもしれませんが、これが第一歩です。
ステップ2:「そもそもどこが問題?」と自問する習慣をつける
問題を細分化する癖をつけましょう。「売上が下がった」→「どの商品の?」「どの地域の?」「どの顧客層の?」というように、問題を絞り込んでいきます。
ステップ3:チームで「なぜ?」を共有する時間を作る
週1回30分でいいので、チームで「なぜなぜ会議」を開催しましょう。お互いに「なぜ?」を問いかけ合うことで、思考の深さが格段に向上します。
まとめ:問題解決の失敗は「手順」で解決できる
問題解決がうまくいかないのは、あなたの能力の問題ではありません。正しい手順を知らないだけなのです。
今日お伝えしたWHERE→WHY→HOWの手順を意識するだけで、問題解決の精度は劇的に向上します。まずは明日、一つの問題に対して「すぐに対策を考えない」ことから始めてみてください。
HOW思考から脱却することが、真の問題解決力を身につける第一歩です。私も15年かけて、ようやくこの重要性に気づきました。あなたはもっと早く、この手順をマスターできるはずです。
明日の記事では、WHERE分析(どこどこ分析)の具体的な方法について、実例を交えながら詳しく解説します。問題を正確に絞り込む技術を身につけたい方は、ぜひご覧ください。
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💡 今日の実践ワーク
あなたが今抱えている問題を1つ思い浮かべてください。
- その問題に対して、すぐに思いつく対策を3つ書き出す
- 一旦その対策を忘れて、「そもそもどこが問題?」と自問する
- 「なぜその問題が起きたのか?」を3回繰り返す
- 最初に書いた対策と、分析後に考えた対策を比較する
きっと、全く違う対策が見えてくるはずです。この違いを実感することが、HOW思考脱却への第一歩です。
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運営者プロフィール|15年の現場経験から生まれた問題解決メソッド
よくある質問
Q: 問題解決の手順は本当にどんな仕事でも使えるのですか?
A: はい、使えます。トヨタ自動車では、エンジン設計から海外営業まで全部門で同じ問題解決手法を使用しています。私自身も携帯販売の現場管理で15年間実践してきました。業種や職種に関係なく、WHERE→WHY→HOWの手順は普遍的に活用できます。
Q: HOW思考から抜け出すのにどれくらい時間がかかりますか?
A: 個人差はありますが、意識して実践すれば2-3週間で変化を実感できます。私の経験では、毎日1つの問題に対してWHERE→WHY→HOWを意識的に適用することで、1ヶ月後には自然とこの思考法が身につきます。
Q: 上司がHOW指示ばかりする場合、どうすればいいですか?
A: まず自分から「なぜこれをやるのですか?」と質問する習慣をつけましょう。また、報告の際に「この問題の原因は〇〇だと考えています」と、WHYの視点を含めることで、上司の意識も少しずつ変わっていきます。
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